【聴診中はお静かに(その2)】

Medicine

先日、聴診中にご注意いただきたい事をお話しさせていただきましたが(【聴診中はお静かに】)、今回も少しお話しをさせてください。

今回は、『心拍』『脈拍』についてのお話です

心拍と脈拍の違い

心拍数脈拍数という言葉を耳にしたことがあるかと思いますが、「心拍と脈拍に違いがあるの?」と疑問に思われる方もいるかと思います。

大雑把に言えば、『心拍』とは心臓の拍動のことであり、『脈拍』は手首等で触れることができる血管の拍動のことです。

「ん?どう違うの?」といった感じかもしれません。

心臓は常に動いていなければ生きていけませんが、その心臓自体の動きは拍動となります。

血液はその拍動によって血管内(動脈)を流れて、体の各場所(臓器器官)に行き渡ります。

このように動脈には大事な血液が流れていることから、大部分が体の奥の方にあって、しっかりと外部から守られています。

しかし、体には胸やお腹などといったがっちりした場所もあれば、手首や足首のように細い場所もあります。

このような体の細い場所にも動脈は走行しなくてはいけませんので、このような場所では、動脈が体の表面近くを走行することになります。

右手の手のひらを上に向けて、右手の手首の親指側(橈側)に左手の指をあてがってみると、左手の指でトクントクンと拍動している血管(動脈)を触れることが出来るかと思います。

これば『脈拍』となります。

心拍はあるが、脈拍がない!?

心臓は動いている(心拍はある)のに、手首で脈が触れない(脈拍がない)人もいます。

どんな時に、このようなことになるのかというと、次のような場合になります。

心臓のリズムがずれた場合
心臓が弱っている場合
心臓が忙しく動いている場合

心臓は一定のリズムで動いていますが、たまに、”トン、トン、トトン、トン、トン、トン”っとスキップをするように拍動する時があります。

この”トトン”『期外収縮』といいますが(それ以外の不整脈の場合もありますが)、心臓が期外収縮をした時は十分な血液が心臓から送り出されないので、手首ではこの時の脈拍が触れなくなってしまいます。

また、心臓の働きが弱っている人は、心臓から送り出される血液量が少ないので、脈拍も弱くなってしまいます。

さすがに、脈拍がないくらいにまで心臓の機能が弱ってしまっている患者さんは外来にはいらっしゃいませんが、脈拍の強弱から心臓の機能を推測することはできるかと思います。

心臓が忙しく動いている(頻脈)場合は、期外収縮の重症ケースとなります。

頻脈が続くと、期外収縮と同様に心臓から十分な血液を送り出せなくなり、この時の心臓は、ひたすら収縮しているだけの”空打ち状態”となっています。

このような場合には、頭に行く血管の血液量も減少しますし、心臓自体を栄養する血管の血液量も減少することから命の危険に晒されます。

まれに、「ちょっとドキドキすような気もする」とかおっしゃって、外来を受診される方もいますが、速攻で救急室に移動となります。

「その手を触りたい!」

聴診する時には、この『心拍』『脈拍』を調べることも重要なこととなります。

多くの患者さんは診察室で聴診器を胸に当てられる際に、両手で上着を上に引っ張り上げて、こちら聴診しやすいように協力してくれます。

そして、両手で上着を上に引っ張り上げてくれた状態をキープしてくれますので、聴診する際にはとても助かっています。

しかし、実はこちらとしては「その上にあげられている手首も触りたい!」のです。

(上着を持ち上げて力の幾分入ったその手を触りたい!)とかの、変な気持ちがあるわけではもちろんありません。

『心拍と脈拍に違いはないか』を確認して、隠れた病態も診察したいのです。

しかし、患者さんの手首を触ろうとするとものすごい違和感も持った顔でみられます。

(聴診するんのではないのか?

(わざわざ、上着を持ち上げたのに、その手を払いのけるのか?

(俺にどうしろというのだ!?)

みたいな顔でみられます。

こちらは、診察したいだけなのですが・・・。

これから、病院を受診する方で医者が聴診器を耳にかけたら、お静かにするだけではなく、貴方の手首も触らせてあげて下さい。

でわ、お大事に。

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